スタッフ 1/2

エグゼクティブ・プロデューサー:原 正人 / はら・まさと

先行き不透明な時代でも、現実を見つめ、力を合わせれば、人は生きていける。

幕末から明治へ…世の中の秩序も価値観も、根こそぎ変わっていく時代の奔流の中で、生きた家族の話――。

きっかけは、金沢の方からのお話だった。「金沢を舞台にした映画がつくれないか?」という流れの中で、この磯田道史先生の「武士の家計簿」にたどり着いた。出版後にはベストセラーになり、テレビ番組でも取り上げられて話題になったご本である。ここから主人公たちの姿をイメージし、物語を作り上げるのには苦労したが、やっと、自信あるものに結実した。
金沢・加賀藩の御算用者という、いわば会計専門の下級武士、そろばん侍一家の詳細な家計簿を発掘し、研究された磯田先生のご著書に、我々は先行き不透明な今の時代に生きている我々自身や家族の姿を見出した。時代に流されながらも、しっかり支え合い、子供たちを教育し、家芸を守り、生きていく。つつましやかに、だがきちんと現実を見つめて力を合わせて生きていけば、どんな時代がきても人は生きていける。そんな思いと願いを託して、この猪山家の人々の物語を贈りたい。

1931年生まれ、埼玉県出身。
50年代に今井正、山本薩夫といった監督の下で第一期独立プロ運動に参加、映画の制作・宣伝に携わる。58年、日本ヘラルド映画に入社。同社宣伝部長、常務を歴任し、数々の洋画ヒット作を生む。81年にはヘラルド・エースを創立、『ニュー・シネマ・パラダイス』(89)などの個性的な洋画の輸入配給を通して、ミニシアター・ブームの火付け役に。また、プロデューサーとして『戦場のメリークリスマス』(83)、『乱』(85)などを手掛け、海外合作の第一人者となる。98年、住友商事子会社と合併して社名をアスミック・エースエンタテインメントに改め、その代表取締役社長に就任。現在、同社特別顧問。主なプロデュース作品は『戦場のメリークリスマス』、『乱』、『失楽園』(97)、『金融腐蝕列島〔呪縛〕』(99)、『雨あがる』(00)、『突入せよ!「あさま山荘」事件』(02)、『明日への遺言』(08)など。著書に「映画プロデューサーが語る”ヒットの哲学“」(04/日経BP社)がある。日本アカデミー賞特別賞、プロデューサー協会賞、仏政府フランス芸術文化勲章オフィシェ、淀川長治賞など受賞歴多数。

監督:森田 芳光 / もりた・よしみつ

常に作品で”今“を問いかけてきた森田芳光が描く、「新しい」そして「暖かい」時代劇。

『武士の家計簿』演出にあたって

果たして武士の時代に家計簿なるものがあったのか?あったなら、如何に家族はそれを基に生きていったか?そして武士社会に於ける「そろばん役」とはどのようなもので、どんな苦労があったのか?時代劇に今までまったくなかった視点で武士の物語を描く意義を感じています。そしてそれらの仕事や生活、生き方を通して、現代にも通じる「人間味」が映画の中から滲み出るような作品にしたいと思っております。時代の激変を腕と家族の団結で乗り越えていく姿を今では稀な三世代家族の暖かさとユーモアも交えて描きたいと思います。

1950年生まれ、東京都出身。
日本大学芸術学部放送学科在学中から8ミリ映画を撮り続け、78年『ライブイン・茅ヶ崎』が好評を博す。81年に『の・ようなもの』で劇場用映画デビュー。83年『家族ゲーム』で数々の映画賞を受賞し、脚光を浴びる。以後、時代の空気を捉えた意欲作を次々に発表し、84年の『メイン・テーマ』『ときめきに死す』がヒット。85年の『それから』は批評家からも高い評価を得て、キネマ旬報ベストワンをはじめ各賞を受賞する。96年、パソコン通信の恋愛を描いた『(ハル)』をオリジナル脚本で発表。97年には、渡辺淳一の新聞連載小説を映画化した『失楽園』が大きな話題となる。以後も99年『39 刑法第三十九条』、2002年『模倣犯』(宮部みゆき原作)、03年『阿修羅のごとく』(向田邦子脚本)、06年『間宮兄弟』(江國香織原作)、07年には黒澤明の時代劇『椿三十郎』をリメイクするなど、ジャンルにとらわれない柔軟さと揺るがない作家性で数々の話題作・ヒット作を世に送り出し、「次は何を撮るのか」が常に期待・注目されている映画監督のひとり。09年秋には、『(ハル)』以来13年ぶりのオリジナル脚本となる作品『わたし出すわ』が公開された。

原作:磯田 道史 / いそだ・みちふみ

歴史教養書としては異例のベストセラーとなった新書を映画化。

「武士の家計簿」映画化によせて

わたしは古文書を調べ、歴史を研究してきました。この国の人々は、幾度も、未曾有の危機になげこまれていますが、そのたびに、梓の木のように、よくしなって、よみがえってきました。なにか底力のようなものがあるのだと思います。ここにあるのは、幕末、三百年つづいた体制が崩壊するなかで、懸命に生きた武士の家族の記録です。古文書で書かれた無味乾燥な「家計簿」の学術調査であるのに、一枚一枚めくって調べるうちに、わたしの目からは、なぜか涙がこぼれてきました。苦しい時代、自分の仕事をきまじめにこなし、家族で助け合いながらまっとうに生き、新しい時代をきりひらいていった我々の先祖の姿がそこにはありました。

1970年生まれ、岡山県出身。
歴史学者。2004年より茨城大学人文学部准教授。専門は日本近世史。02年、慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。慶應義塾大学・宇都宮大学などの非常勤講師を経て現職。98年から03年まで日本学術振興会特別研究員。03年、本作「武士の家計簿」で第2回新潮ドキュメント賞を受賞。その他の著書に「近世大名家臣団の社会構造」(03/東京大学出版会)、「殿様の通信簿」(06/朝日新聞社)、「江戸の備忘録」(08/朝日新聞社)など。

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